道具としてのフリース。

エッセイ

 『道具』という言葉にどうも惹かれてしまう。仕事道具や古道具など、何か役割を与えられて生み出されてきたモノたちが、使われることによって各々の役割を全うするのがかっこいいと思う。そして、そのモノたちが光り輝く瞬間を目の前で、手の中で感じられることが時折り嬉しくなる。中でも、自らこだわりを持って選んだ道具が活躍してくれる姿はひときわ美しい。

 僕にとっては衣服も同じ『道具』の一つ。中でもフリースは、軽くて暖かくて、タフに使っても大丈夫なところがいかにも道具っぽくて好きだ。汚れてしまっても洗濯機にポイっと放り込めば問題ない。余計なことは考えさせず、自分の生活に向き合う環境を整えてくれる心強いパートナーだ。

 どう着こなそうかなんて、そんないかにもなコーディネート論はない。お気に入りのフリースの上からお気に入りのコートやジャケットを羽織るだけ。お気に入りのサンドイッチ。気張らない、かっこつけない、自然体。寒いから好きなものを重ねてみただけ。それくらいのテンションの方が軽やかに服を纏える。割と色々な服を持っているのにも関わらず、だいたい同じものしか身に付けていない。この冬もたくさんお世話になった。

 家でゴロゴロしている時、仕事へ向かう時、デートへ行く時。いつだって隔たりなく、僕を自然体にさせてくれる服だ。

 好きだからってつい集めすぎてしまったので、もうこれくらいにしておきたい。日中はだいぶ暖かくなってきたので、そろそろ次の秋までお別れ。いつもこの時期は少し寂しくなってしまうので、なるべくギリギリまで着る。そして、役目を終えたら綺麗に洗って、しっかり日の光で乾かして、押入れの奥にしまっておこう。また、寒くなった日には頼むよ。

エッセイ
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服と僕

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