2021年2月 コート

エッセイ

 10代の頃、コートが苦手だった。特に丈が長いもの。足が太いのを気にしてワイドパンツばかり履いていて、コートを合わせると全体のバランスが悪くて気にいらなかった。かっこいいなと思いつつも、「似合わないし、僕には着られない服だなあ」と敬遠していた。今思えば、自分に自信がなくて人の目を気にして、「着てみたい」という純粋な気持ちに向き合えていなかったんだと思う。人の内面が服装に表れると言うならば、丈の短い服が僕の自信のなさを表していたのかもしれない。

 そんな僕も20代に入って、コートデビューを果たす。明確なきっかけがあったわけではないけど、誰かにどう見られているかを考えるよりも、自分の好奇心に素直なれるようになった。自分を満たせるのは自分だけだと少しわかった瞬間だった。

 ナイロンポリのコートは濡れてもすぐ乾くし、カバンに入れておいてもシワにならない。何より軽くて、旅をするにはもってこい。いつもより足取りも軽くなる。たくさんの時間を共に過ごしてヨレてきているし、襟や袖回りも汚くなっている。そろそろ新調したい気持ちもあるが、暖かくなってきた頃につい手をにとって袖を通すのは決まっていつもこのコートだ。服も春の訪れを知らせてくれる。

 端正な顔立ちのコートは羽織るだけで背筋がピンと伸びる。自分のことを半歩先くらいの存在にさせてくれるようで、自然と胸を張って歩ける。風が吹くとフワッと空気を包んで、ゆらゆらとする姿は美しい。ただ、僕はだいたいボタンを閉めて着ているので、綺麗に揺らぐことはない。閉めた方が単純に暖かいし、中に着ている服をサボってもバレないから。懐が深くて安心する。

 ウール生地などの冬用コートは買わない。当たり前だけど、ほぼ冬しか着られないからだ。たったの2、3ヶ月しか着られないのはもったいない気がするし、なかなか出番が回って来なくて僕のクローゼットを温め続けるようなことはさせたくない。お気に入りの服とはできるだけ多くの時間を過ごしていたい。だから、僕にとってコートは春・秋・冬に着る服。いくら好きでも、さすがに夏は休んでいて欲しい。

エッセイ
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服と僕

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