痛風とビルケン。

エッセイ

 自分でもまだちょっと信じられないのだけど、「痛風」になってしまったらしい。風が吹くだけで激痛が走ると言われるあれです。コロナ禍でお酒を飲みに行くこともほとんどなかったし、決して健康に気を使った食生活をしていたとは言えないけど、そこまでひどいものではなかったと思うし、まだ27歳だし、太ってもいない。もうなるはずがない理由ばかり考えていたけれど、診断されてしまったのでもうどうしようもない。

 思い当たる原因があるとすれば、1つは最近仕事がさらに忙しくなってきたこと。現在、自分のキャパだけでは収まりきらない業務量をなんとか回そうとして、1週間がとんでもない早さで過ぎていっている。残業も増えてきていて、平日遊びにいく暇も中々とれない。正直コロナ禍で平日にご飯や飲みの誘いが少なくなったので、断る回数も減ってよかったと思っていたほどだ。幸い職場環境はいいのでなんとかやり切れているし、精神的に病むようなこともないけれど、体の方が悲鳴を上げ始めた模様。今まで痛風は中年男性がなるものだと勝手に思っていたのだが、どうやら働き盛りの20~30代で発症する人が多いようで、よく働いているということは自覚できた。

 もう1つは父親からの遺伝。恐らくこれが1番の原因だと思っている。父は痩せているし、割と健康にも気を使っているのにも関わらず尿酸値が高い。今回、僕も血液検査を受けることになったのだが、結果は正常値の上限ギリギリいっぱいだった。(結果がギリギリすぎて、思わずお医者さん目の前で笑いそうになってしまった。)逃れらない運命。継承される尿酸値。父親に恨みなど全くないし、この件を責めることはないけれど、僕の父をはじめ先祖たちは生まれながらとんでもないペナルティを背負わされていることを認識した。

 正直、痛風によって具体的にどんな症状が表れるのかもよくわかっていなかった。自分がなると思ってなかったから。よく親指の先が痛くなると聞いていたが、僕の場合は右足首付近に症状が出た。足を捻っていないにも関わらず、強めの捻挫をしたくらい足首が痛くなって、コッペパンみたいにどんどん腫れていく。ひどいときはびっこ引かないと歩けないくらい辛い時もあった。痛み止めを飲めば少しはマシになるけれど、機敏には動けないし、やっぱり痛い。痛風なんて名前よくつけたと思っていたが、実際なってみると半分は嘘だと思った。風が吹かなくても、もはや何もしてなくてもめちゃくちゃ痛かった。何より怪我もしていないのに足を引きずりながら歩いているのが、なんとも情けなくて恥ずかしくて悲しかった。一方、すれ違う人は僕が歩きやすいように少し間隔を開けて通り過ぎてくれる。見ず知らずの僕が本当に足を痛めているのか確証もないのに怪我している人と認識して、他人という関係の中での最大限の優しさを与えてもらって少しだけ心が明るくなった。気を使ってくれた人、皆幸せに暮らして欲しいと思う。

 服好きな僕からしたら、痛風は死活問題だった。まず、痛みで靴に足が入れられない。足がパンパンに腫れてしまったら物理的に履くことすら困難になる。革靴なんて固いものは絶対無理だったし、あの「1000点中990点の履き心地」と評されるNew Blance 990V4ですら、履くまでに痛みが伴ってしまうので無理だった。(今思えば靴紐を解けばいけたかもしれないが、当時そんな余裕はなかった。)靴下を履くのもひと苦労である。足先から踵へ向けてゆっくりと足にかぶせていく。患部に響かないように慎重に生地を伸ばしていき、踵まで到達したら足首を慎重にゆっくりと通過させる。長い靴下だとこの通過点が長くなるので注意が必要だった。パンツも油断できなかったが、幸い僕は細いパンツを履かないので、患部に干渉することなくスムーズに着用することができた。恐らくスキニーパンツなんて履けたものではない。あんなもの痛風の際に履こうものなら自殺行為だ。テーパードが効いたパンツもだめ。とにかく、足首周りにフィットするようなパンツはやめた方がいいと思う。お気に入りの服や靴が凶器と化してしまう。

 唯一、痛風になって感動したのが、ビルケンシュトックのサンダルは本当に足にやさしかった。ビルケンシュトックはドイツのシューズブランドで、元々医療用のフットベッド(中敷き)を開発していた歴史があり、人間工学に基づいた快適な履き心地を強みとしている。僕が持っているのは『ボストン』というモデルで、スリッパのような形でブランドの中でも有名且つ人気の品番。たまたま今年の夏に履きたい気分になって、人生で初めてビルケンを買っていた。前掲の通り靴に足を入れられないので、このビルケンしか履くことができなかったのだが、正直とてもよかった。まず、当たり前の話だが足を入れるのに全くストレスがない。何も足に干渉しない。これだけでとても安心できた。そして、足を踏み込んだ時の衝撃をビルケンオリジナルのフットベッドが吸収してくれるので、過度に痛みを感じることなく足を踏み出すことができた。今の時期では裸足だと寒いので、必ず靴下も履いてビルケンを履いていたのだが、不幸中の幸いかフットベッドと靴下によってさらに衝撃が抑えられていた。足を痛めている間、他のスニーカー(VANSやNew Blalance)も履いてみたが、ビルケン×ソックスに勝る安心感はなかった。痛風になった足の痛みに苦しんでいる人は、とりあえずビルケンを履いた方がいい。足に干渉しないサンダルであれば何でもいいというのは、後々自分の身を苦しめることになる。

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服と僕

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